ドラクエのゲームでは音楽を内蔵音源で演奏するのを基本にしています。
内蔵音源はシンセサイザーですからどんなに難しい曲でも、また指が6本なければ絶対に弾けないようなフレーズでも楽々と演奏してしまいます。
つまり楽器の機能上の制約(例えばハープに早い半音進行は不可能など)は殆ど無いと言っても良いでしょう。
また普通はオーケストラには無い音色を自由に使うことも出来ます。
ドラクエのゲームでも、チェンバロ、パイプオルガン、ギター、エレキピアノ、エレキベース、ソプラノの声、などなど色々な音色を使っています。
オーケストラコンサートにこれらの楽器を登場させると、コンサートの開催にあまりにも多くの制約が出来てしまいます。
ドラクエのオーケストラスコアはどこのオーケストラでもすぐ演奏出来るよう標準的な編成で書いています。
そこにまたオーケストラならではの新鮮な魅力が生まれることを信じて頑張っているわけです。
例えばオルガンの音色が原曲にある場合、編成にオルガンを入れれば編曲者としては一番楽な方法です。しかしそれではオルガンの無いホールでの演奏は不可能になってしまいます。オルガンを使わずに編曲するのは大変ですがそれはそれで挑戦する気持ちをかき立ててくれます。
オーケストラのアンサンブルの音色が新たな魅力を引き出してくれるからです。
さて、DQ VIII「空と海と大地と呪われし姫君」のゲームではピアノで演奏しているメロディですが、これもオーケストラの楽器で演奏するのが正解だと判断しました。
編曲には建築設計と同じように強度計算が必要になります。
オーケストラが盛り上がって、フォルティシモで演奏しているときにピアノがいくら頑張ってもその音はもぐってしまいます。
録音ならばピアノに別マイクを立てて、その音だけを大きく拾うことは可能ですが、生のコンサートでは無理です。それよりもオーケストラ全員で朗々と奏でるメロディを楽しんで頂きたいと考えたのです。
人間−それも素晴らしい音楽家集団の表現にはシンセサイザーには無い魅力が一杯詰まっています。
是非楽しんでください。
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